FEATURE PC上部工レポート
鳥取県内でも3例目となる
珍しい工法を採用した橋梁上部工事
当地区周辺には「宮ノ下小学校」や「国府中学校」などの文教施設が点在していますが、これまで児童・生徒が安全に通学するための十分な歩道幅が確保されていませんでした。また、地域の交通を支える中郷橋は車道幅が狭く、大型車両のすれ違いが困難な上に、昭和30年代の建設から年月が経ち老朽化も進行していました。
こうした課題を解決し、地域の未来を守るために始まったのが、歩行者の安全確保と交通の円滑化を目指す「通学路安全対策事業」です。本工事はその中核となる、中郷橋の架け替えという大きなミッションを担っています。
今回は、最前線で指揮を執る平井所長と、現場で日々成長を続ける宮本さんの2名に、工事の舞台裏や仕事にかける熱い想いを聞きました。

この現場は一言でいうと、どんな現場ですか?
平井所長:鳥取県としても大きなプロジェクトであり、今回は「プレビーム桁」という県内でも3例目となる珍しい工法を採用しています。鋼桁(メタル)とコンクリートが複合したような構造が技術的な特徴で、前例が少ない工法です。そのため、過去の事例を色々と調べながら慎重に進めていく必要があり、非常に難易度の高い現場だと言えます。
この現場ならではの難しさ、PC上部工の中でも特にシビアな部分や気をつかうポイントはありますか?
平井所長:前例の少ない工法であるため、仮設構台や支保工の設計条件を満たすための地盤状況の確認には非常に神経を使いました。地盤より上の部分は修正がききますが、基礎などの下の部分は一度組んでしまうと後戻りができないため、地盤改良材などでしっかりと対応しています。
また、PC(プレストレスト・コンクリート)部分ではありませんが、今回は河川内のヤードを使用しなければクレーンでの架設ができない状況でした。そこで、我々PC専門業者が不得手とする土工関係については、JVのパートナーである栗山組さんに指導・管理していただきながら進めることができ、非常に助かりました。さらに、市街地での工事で小学校も近かったため、工事車両の出入りには特に気を使っています。
上部工において特にシビアなのは、PC桁の据え付け時の精度管理です。桁を架ける前にゴム支承を設置するのですが、この支承の高さや位置関係で桁の据え付け精度がほぼ決まります。共通仕様書では±5ミリという非常に高い精度が求められており、元請職員としても最重要管理ポイントです。
また、PC上部工は通常のRC(鉄筋コンクリート)と異なり、PC鋼材を引っ張って力を与える「プレストレスの導入」という作業があります。このプレストレスが設計通りに確実に導入されたかどうかの圧力確認や、PC鋼材の伸び量の確認も、PC工事を代表するシビアな管理項目です。

実際に苦労した場面を教えてください
平井所長:たくさんありましたね(笑)。中でも、桁の架設日に大雪に見舞われたことは印象に残っています。降雪自体は珍しいことではないのですが、今回は桁を富山県の工場からトレーラーで運搬するため、雪がひどいと通行止めになってしまいます。工場や現地の運送会社と密に連絡を取り合いながら搬入を進めるのには大変苦労しました。
また、河川内での施工だったため、雪解け時期の水位や流量の管理にも気を配りました。水位がヤードの高さギリギリまで迫ることもあり、重機や資材をいつでも避難させられるよう常に準備をしていました。結果的には問題なく終わりましたが、気が抜けませんでしたね。その他にも、プレビーム桁の設計照査において、ボルト穴の寸法など非常に細かな確認事項が多く、設計者へ確認し発注者へ報告するやり取りにも骨を折りました。
想定外だったことはありましたか?
平井所長:河川内での作業には出水期と渇水期があり、出水期に入ると盛土や足場の撤去といった制約が生じます。事前に分かっていたことではありますが、実際に進めてみるとその縛りは想像以上に厳しく、プレッシャーを感じました。「この工程をこの日までに確実に終わらせてほしい」という指示を出し、絶対に判断を間違えられないという緊張感がありました。これについては、上部工だけでなく土工も含め、協力業者と緻密に打ち合わせを行い、人員配置の調整などチームワークを大切にして皆で一丸となって乗り切りました。
また、クレーン配置についても計画通りに進むか不安がありましたが、これについては宮本君が作業半径や重量を事前に確認し、綿密な作業計画書を作成してくれたおかげで、想定通りスムーズに進みました。
河川内ヤードの地盤が思っていたよりも悪かったことも想定外でしたが、敷鉄板を利用して柔軟に対応しました。トラブルがあっても、その都度協力業者と話し合って情報を共有し、こちらの意図が正確に伝わるようこまめなコミュニケーションを意識して対処しています。

美しい橋になるだろうと今から想像しています
正直“しんどい”と感じる部分はありますか?
平井所長:やはり書類関係ですね。簡素化されているとはいえ、まだまだ作成に手間がかかります。 現場作業で言えば、上部工特有の「架設時」の緊張感です。重量物を取り扱うため、クレーンの作業半径やワイヤーの確認など、何度経験しても最大限の神経を使いますし、一瞬たりとも気が抜けません。
現場で判断に迷った場面はありますか?
平井所長:着手前の設計照査の段階である程度の問題点を洗い出し、最大限の準備をして臨んでいるため、大きなトラブルはありませんでしたが、細々とした判断を迫られる場面はありました。そんな時はこれまでの経験を活かして乗り切っています。
たとえば、図面通りに鉄筋が組めないといったことは他の現場でも時折発生します。その場合は、道路橋共通仕様書の基準通りに組めるよう調べた上で、発注者と協議し、承認を得てから施工します。
現場では「工期・安全・コスト」のすべてが優先事項です。その中で最もバランスの良い落としどころを見つけるのは経験がモノを言います。ただし、安全に関してだけは別です。橋梁工事は高所作業が多いため、安全帯の確実な使用や墜落防止ネットの設置など、一切の妥協は許されません。



PC工事の魅力についてお聞かせください。
平井所長:基礎工事や下部工は土の中に隠れてしまいますが、PC上部工は目に見える形で表に残ります。一番の「おいしいところ」を担当できるのが、PC工事の大きな魅力ですね。
また、仕事とは少し逸れますが、PC専門業者は全国各地の現場を回るため、各地域で美味しいものを食べられることも楽しみの一つです(笑)。この現場でも「まつやホルモン店」や牛骨ラーメンに行きましたが、本当に美味しかったですね。おかげで鳥取の土地勘もバッチリです。 私は30年間PC架設に携わってきましたが、規模でいえば鳥取県の倉吉関金道路の現場が最大でした。ただ、今回の現場も距離は短いですが「プレビーム桁」という特殊性があり、私の経験の中でも非常に印象深く、貴重な現場となっています。
PC特有の魅力としては、RC(鉄筋コンクリート)に比べてスパン(支間長)を長くでき、桁高を抑えられるため、見た目がとてもスレンダーになる点です。今回のプレビーム桁は特に桁高が絞られているので、完成した際には非常にすっきりとした美しい橋になるだろうと今から想像しています。

若手が育っていく中で、若手に対して一言お願いします。
平井所長:現場での施工管理を円滑に進めることはもちろんですが、発注者の意図をしっかりと汲み取り、それに基づいた書類作成や的確な打ち合わせができる技術者に育ってほしいと願っています。
この工事を振り返ってみて率直な感想をお願いします。
平井所長:上部工の専門業者として経験が少なかった「河川内盛土」の設置から撤去までを、栗山組さんに相談しながら無事に終えられたことが、正直一番ホッとしている部分です。2工区の作業もまだこれから控えていますので、工程との兼ね合いもありますが、まずは安全第一を徹底し、引き続き無事故で進めていきたいと思います。

豊富な経験と知識を持つ先輩達。
彼らのような、頼られる技術者になることが目標です。
最初に現場に来たときどう感じましたか?(PC工事で驚いたことは?)
宮本:過去に橋梁補修工事の写真などを見たことはありましたが、橋梁上部工の現場に直接携わるのはこれが初めてでした。
この現場の特徴であるプレビーム桁について、「実は主流な工法ではない」ということを最初に知り驚きました。PC専門業者である日本PSの担当者の方ですら「この工法は初めて」と仰っていて、初の上部工現場がプロでもなかなか経験できない希少な工事だと分かり、逆にワクワクしたのを覚えています。
一番大変だったことは?(失敗、苦労したこと)
宮本:県外から来られる業者さんが多く、初対面の方ばかりだったので、まずは積極的にコミュニケーションを取ることを意識しました。平井所長から「宮本君はすぐ人と仲良くなれるね」と褒めていただき、自分では意識していなかったので嬉しかったです(笑)。
苦労したのは、橋梁上部工に関する知識が全くなかったことです。施工計画書を見た時は「意外と項目が少ないな」と思ったのですが、実は一つひとつの内容がとても濃く、それを理解するのに今でも苦労しています。
また、クレーン計画を自分で作成したのもこの現場が初めてでした。日々の作業に合わせて「明日はどの部材を吊るのか」「この旋回半径や重量で本当に安全か」「数日後に搬入・搬出するものは何か」を先読みして把握するのが大変でした。最初はイレギュラーな事態にも戸惑い、非常に時間がかかりましたが、最近はスムーズに計画を立てられるようになりました。ミリ単位の調整やトランシットを使った測量など、これまでの土木経験を活かせる部分も大きかったです。分からない事があればまずは自分で考えますが、それでも分からない時は素直に周りに聞き、図面を見て、現場で直接教えてもらうようにしています。皆さんと相談しながら解決していく姿勢を大切にしています。

成長したと感じる瞬間は?
宮本:自分で判断できる場面が増えてきたことですね。自分で「成長した」と実感するのはなかなか難しいですが、コミュニケーション能力は間違いなく鍛えられたと思います(笑)。
また、「図面がすべてではない」ということに気づけたのも大きな収穫です。図面に載っていない事態が起きた時、最後はやはり経験がモノを言います。今の自分にはその経験が圧倒的に足りませんが、現場で先輩方の対応を間近で見て学んでいます。
最近は、一度教わってできるようになった作業を「次もお願い」と任せてもらえる機会が増えました。最初は何も分からなかった自分が、できることを増やし、任せてもらえるようになったこと、そして少しでも信頼を得られていると感じられることが今は本当に嬉しいです。
この現場を通して感じたことは?
宮本:世の中にはすごい人がたくさんいるんだな、と圧倒されました。日本PSの皆さんは全国で仕事をされていて、業務のことはもちろん、プライベートなことまで知識が本当に豊富です。「一度興味を持ったことはとことん追求し、自分の言葉で分かりやすく人に伝えられる」という共通点があり、純粋にすごいと感じました。村上さんや清水さんを筆頭に栗山組の皆さんもそうですし、豊富な経験を持ち、協力業者からのあらゆる質問に即答している姿に強く憧れます。私の目標も、あのように頼られる技術者になることです。
もし次に橋梁工事に携わる機会があれば、今度は自分が現場を引っ張る立場で挑戦してみたいです。間違いなく忙しいとは思うのですが、先輩方がその忙しさすらも楽しんでいるのが伝わってくるので、「自分もそんな風に現場を動かしてみたい!」と強く思っています。
| 工事名 | 県道三代寺宮下線(中郷橋)橋梁上部工事(1工区)(補助公安) |
|---|---|
| 発注者 | 鳥取県 |
| 所在地 | 鳥取市国府町町屋外 |
| 工事概要 |
コンクリート橋梁上部工(3径間連続プレビーム合成桁橋) 橋長L=69.050m 有効幅員12m(車道3.5m×2、歩道2.5m×2) プレビーム桁製作N=5本 地組工W=214.0t 本締め工N=3860本 支承工(ゴム支承)N=22基 本締め工N=3860本 架設工W=304.6t 床版工(埋設型)A=440㎡ 横桁取付工N=11箇所 仮設工N=1式 |
| 竣工年度 | 令和8年6月 |
| 施工者 | 日本ピーエス・栗山組JV |
| 工事担当者 | 平井 一紀(日本ピーエス)/ 越智 寿一(日本ピーエス)/ 黒田 昌希(日本ピーエス)/ 冨田 旺佑(日本ピーエス)/ 宮本 翔大(栗山組) |
| 請負金額 | 446,083,000円(最終変更で金額が変わります) |